知っておくと有利なこと

アメリカ不動産には境界杭はないのか?

大西です。

日本では戸建てや土地の売買を行う時に隣地との境界の明示を行います。

それはどこからどこまでが売買対象の土地であるかを示す為です。

道路に面した箇所は道路とお隣さんとの塀の境に、家の後ろ側は交差する部分を掘り起こすなどすると、その境目を明示する杭を見つけることができます。

しかし、中には塀を作る際の工事で抜けてしまったり境界杭が見つからないようなことも少なくありません。

境界が確定していないと問題があるのか?

境界杭がなくても買主が問題なければ売買契約は成立します。

しかし、境界が分からなければはっきりとした面積が分かりません。

登記簿は随分前に記録された面積なので実際と異なることは少なくありません。

また境目に建っている塀が自分の敷地内なのか、相手側なのか、それとも塀の真ん中が境界なのかが分かりません。それによってどちらが塀の修繕を行うかが変わってきます。

新築を建てる場合には、実際の面積によって建築できる建物の面積も制限があるため、思っていたより小さかったでは困るのです。

他にも境界が確定していなければその土地を分ける(分筆)たり、いくつかの土地を1つにしたり(合筆)することができません。

そのため、アパートを解体して2つ戸建てを建築し、2宅地に分けて売却するような場合には境界が確定していなければならないのです。

中古物件をそのまま使用しているうちは大きな問題ではないですが、建築が絡んでくると境目をはっきりさせなければならないので、初めから境界確定がされている物件の方が好まれます。

確定させるにはどうしたらよいか?

面積を図るだけでしたら現況測量を行えばよく、費用も比較的安くすみます。しかしこれでは公的に境目が明示された資料としては認められません。

そのため、確定測量を行い本来どこに境界が来るべきなのかを特定します。入り口側であれば道路との境目もあるので役所の方にも来てもらい、そして隣地の土地所有者に立ち会ってもらって境界確認書にサインと印鑑をもらう必要があるのです。

このときお隣さんと人間関係が上手くいっていないと、印鑑を押してくれないことや、印鑑代をよこせといったことになるため、第三者である土地家屋調査士が慎重にこの作業をおこなってくれるのです。

測量だけではなく、杭を確認したり復元を行い、役所やお隣さんに立ち会ってもらってサインをもらうなど手間がかかるので費用もかかります。

通常の戸建てサイズで現況測量20万円〜、確定測量60万円〜といった相場感です。

アメリカには境界杭はないのか?

アメリカには境界はありますが、私の見てきた地域では境界杭は埋められていません。

区画の寸法がデータ化された図面(parcel Map)が行政に登録されており、それにより敷地の境目や大きさを管理しています。そのため測れば敷地がどこからどこまでかが分かるようにはなっていますが、その境目に杭をいれるという習慣はないようです。

何故境界杭がないのか?

ここからは私の推測になりますが、

1つ目は土地より建物があることを重視するから

2つ目は土地値が比較的安い

3つ目は新築があまり建たない

4つ目は合理的だから

ではないかと考えます。

土地より建物があることを重視するから 土地値が比較的安い

1と2の理由は近く、アメリカでは土地2割:建物8割といったように建物の方が価格が高く見られる傾向にあります。当然一等地は高値ですが、広大な土地をもつアメリカでは土地の価値よりも、そこに家があってこそ人が住めたり家賃が入ってくるという考えから、建物が重要視される傾向になります。また家の敷地もフロントヤードとバックヤードがあり日本と比べるとかなり大きめの敷地であることからも、杭1個分の5センチくらい気にならないのではないでしょうか。

日本では狭い土地でも10階建てのビルが建つなど場所によっては収益性が高く、1㎡あたりかなりの金額で取引されることもあるので数センチ杭の場所がずれると売買価格が何百万変わることも珍しくありません。

新築があまり建たない

アメリカは新築物件の供給量が規制されているため簡単に新築を建てるようなことはできません。

その事もあって、築50年などの物件がリフォームされながら長年使用されるのです。

建築をしない場合には、お隣さんとの塀のあたりが境目と思っておけば良いのですから特段問題はありません。

合理的だから

境界を確定させる確定測量はお金も手間もかかります。

それだけ広い宅地があって、塀があるところが大体境目であると分かっているのに、わざわざお金かけて測量をして抜けてしまうかもしれない杭を入れる必要がないという考えではないかと思います。

まとめ

アメリカではしっかり計測された測量データが行政に保管されている。そのため境目を計測してもらうことはできるが、一般の人が境目が分かるような杭は入っていない。広大な敷地をもつアメリカ住宅の土地値は日本と比べると安く、数センチの大きさを明示することへの費用対効果が低いからではないでしょうか。