大西です。
アメリカ不動産の所有権には4つの種類があります。
1.テナンシー・バイ・ザ・セブラルティー(tenancy by the severalty)
2.テナンシー・イン・コモン(Tenancy in Common)
3.ジョイント・テナンシー(Joint Tenancy)
4.テナンシー・バイ・ザ・エンタイアティー(Tenancy by the entirety)
テナンシー・バイ・ザ・セブラルティー(tenancy by the severalty)
日本と同じで、1人が単独で所有権を持つ形です。
その他3つは共有で所有権を持ちます。
テナンシー・イン・コモン(Tenancy in Common)
日本の共有名義にあたるものです。複数人で所有する事もでき、その持ち分割合も出資割合など好きな割合で持ち分を決めることができます。
アメリカの相続事情
上記2種類と後述する2種類の所有権の違いは所有者がなくなった際の相続手続きの違いにあります。
日本では被相続人(所有者)が亡くなった場合には、その相続人が次の所有者ということになり、その配分は遺言書や当事者間の合意によって行われます。
相続人が仲が悪く揉めていると、遺産分割協議書への署名・捺印を拒むなどして相続を行うまでに時間がかかるケースもありますが、通常それほど手続きに時間や費用を有するものではありません。
一方アメリカでは、相続の手続きを全て裁判所を通して行わなければなりません。これをプロベート(検認)と呼びます。
裁判所を通すため、弁護士などの専門家に依頼し相続財産の特定や相続人の把握を行なってもらわなければならず多額の費用がかかります。
また資産を引き継いだ人(相続人)が相続税を支払う日本に対して、アメリカでは非相続人(亡くなった人※遺産に対して)に遺産税がかかり、遺産税を支払うまでは相続人に所有権が移転することができず、資産を引き継ぐまでに1年以上の期間がかかります。
相続が発生した際に裁判所を通して手続きをおこなわなければならず、時間とお金、手間がかかるといった慣習から、それらの手続きを省略できるよう所有権の種類も発達したのが下記2つです。
下記2つの所有形態にはRight of Survivership ライト・オブ・サバイバーシップ(生存者取得権)が付いており、所有者が亡くなった際には自動的に共有の生存者が自動的に所有権を取得することができるのです。
ジョイント・テナンシー(Joint Tenancy)
何人でも一緒に共有できるのは、テナンシー・イン・コモン(Tenancy in Common)と同じですが、その持分は全員同じ割合となります。
そして、共有者のうち誰かが亡くなった場合は、裁判所を通さず、共有者が自動的に所有権を引き継ぐことができるのです。
全員が均等に相続することとなり、相続後も再び全員同じ割合の持ち分となります。
最終的に所有者が1人になった場合はテナンシー・バイ・ザ・セブラルティー(tenancy by the severalty)単独所有の形態に戻り、最後の所有者が亡くなった場合にはプロベート手続きが必要です。
テナンシー・バイ・ザ・エンタイアティー(Tenancy by the entirety)
夫婦が共有で所有権を持つものです。一方が亡くなった際には自動的に全ての所有権が配偶者(妻または夫)に移転します。
アメリカ市民またはアメリカ居住者の配偶者が取得した財産には制限なく配偶者控除が受けられます。つまりアメリカの夫婦の相続では遺産税を支払う必要がないため、夫婦ではテナンシー・バイ・ザ・エンタイアティー(Tenancy by the entirety)で共有名義にする方が多いです。
日本在住の日本人の場合は配偶者控除の適用がありませんのでご注意下さい。
また離婚した場合はTenancy in Commonテナンシー・イン・コモンの形になります。
以上、相続のタイミングは誰にも分かりませんが、長期保有をお考えの方は適切な所有形態を選び、万が一の際にプロベートの手続きを避けられるようにしておいた方が良いかもしれません。
共有以外のプロベートを避ける方法はアメリカ不動産の相続 プロベートを避けるには?を参照下さい。