大西です。
国外に財産を所有する方が増加するなかで、国税は海外の財産を把握し適切に課税をすることが出来ない悩みを抱えていました。
富裕層やグローバル企業の海外財産への課税強化策として、2014年1月より「国外財産調書制度」が始まりました。
国外財産調書の提出義務
居住者(「非永住者」の方を除きます。)の方で、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する 方は、その国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、その年の翌年の3月15日までに、所轄税務署長に提出しなければなりません。
そのような制度をご存知ない方も多いのではないかと思いますが、国外財産調書に偽りの内容を記載したり、正当な理由なく提出期限内に提出しなかった場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることがあります。
提出件数は制度導入の2014年から年々増えており、2017年には9500人超が国外財産調書を提出。その総額は3兆6千億円にものぼります。
1 総提出件数 9,551件 ※東京局 6,154 件(64.4%)、大阪局 1,331 件(13.9%)、 名古屋局 699 件(7.3%)、その他 1,367 件(14.3%)2 総財産額
3兆6,662億円
※東京局 2 兆 7,485 億円(75.0%)、大阪局 4,274 億円(11.7%)、名古屋局 1,906 億円(5.2%)、その他 2,996 億円(8.2%) 3 財産の種類別総額
財産の種類
総額
構成比
有価証券
1兆9,252億円
52.5%
預貯金
6,204億円
16.9%
建物
4,038億円
11.0%
貸付金
1,705億円
4.7%
土地
1,449億円
4.0%
上記以外の財産
4,014億円
10.9%
合計
3兆6,662億円
100.0%
提出しなかった場合、どうなるのでしょうか?
資産家の方はこのあたり厳密なので提出されており、実際に罰則を受けた事例は聞いたことがありません。
しかし、実際に申告しておらず指摘された事例=加重措置は1年で約200件になります。
過少申告加算税及び無申告加算税の特例措置
国外財産調書の提出のある方及び提出を要すると見込まれる方に対する平成29事務年度における所得税及び相続税の実地調査の結 果、特例措置を適用した件数及び対象となった増差所得等金額は次 のとおりです。
件数
増差所得等金額
軽 減 措 置※1
168件
45億7,467万円
加 重 措 置※2
194件
51億1,095万円
※1 提出された国外財産調書に記載された国外財産に係る所得税・相続税 の申告漏れが生じた場合に適用します。
※2 国外財産調書の提出がない場合又は提出された国外財産調書に記載の ない国外財産に係る所得税の申告漏れが生じた場合に適用します。相続 税及び亡くなられた方の所得税についての適用はありません(加算税の 特例措置については、次頁「国外財産調書提出制度の概要」を参照)。
外国株や投資信託、海外不動産購入が身近になった今、多くの方が国外財産を所有する時代になりました。
該当する方は担当の税理士と相談されることをお勧めします。