知っておくと有利なこと

アメリカ不動産を購入するときインスペクションは必要なのか?

大西です。

先日お客様に聞かれた内容についての回答を共有します。

「以前に日本の不動産を購入するときにインスペクションを依頼しましたが、正直必要がなかったと感じました。アメリカ不動産を購入するときにもインスペクターに依頼する必要性はありますか?」

必要がなかったと思う理由

・1、2時間の調査で10数万円かかったと思うが特に指摘箇所はなく、問題がないのは良いことであるが払い損になってしまったように感じられた

ということでした。

これは日本の不動産取引の仕組みと市場がインスペクションの仕組みと上手くマッチしていないことから起こるのではないかと感じています。

結論、アメリカではインスペクションを依頼した方が良いと思っていますのでその理由についてご説明します。

アメリカ不動産は古いものが多い

日本では築50年といった木造物件は取り壊しされて新築が建つのが一般的です。

築30年などの物件であれば中古住宅として取引はされるものの、建物はそれほど価値がないと見なされ土地値に近い価格で売買されることも少なくありません。

築浅の物件であればシロアリや害虫の侵入経路があったり柱が腐っているなどの不良は見つかる可能性は低いものです。

インスペクションで建築不良が見つかれば知らずに買わなくて良かったになるのですが、建物を50年など使わない日本で建物の不良が発見される可能性が非常に低いということが払い損に感じてしまう一つの原因だと思われます。

 

一方アメリカでは築70年以上でも中古戸建ては取引されており、そのほとんどは新築された価格より高額で売買されています。

日本以外の先進国では、住宅を作りすぎて不動産の資産価値が下落してしまうことを避けるよう新築の供給量を規制しています。

市場に出回る物件の80%以上が中古であるアメリカでは、手入れをしながら長年物件を使用する中古市場が確立しており、築70年の以上の物件も珍しくはありません。

そういった物件には70年前の見取り図があることは稀ですし、屋根も床も壁も代わっていれば、エアコンといった設備も交換しています。また後ろにデッキを増築してあったりと建物のほとんどが建築当時のものではないのです。

そのため現状がどうなっているのか、不備はないかをプロの目で見てもらって買わなければなりません。

自身ではその確認をすることが難しいためインスペクターに依頼をします。

売主・仲介業者では物件の保証をできない

売主や仲介業者(リアルター)では物件を保証することができません。

売主は自身が知っている限りの情報を提示します。

・ガスコンロが一つ動かない。

・雨漏りはこれまでなかった。

仲介業者(リアルター)は知った内容を伝えています。

・管理費はいくらと管理規約に載っています。

・売主は今まで設備に不備はなかったと言っています。

それでも引渡後、屋根裏にスズメバチの巣が見つかったとした場合、売主、仲介業者ともに知らなかったのであればしっかり物件を確認しなかった買主の責任ということになります。

インスペクション費用は買主が負担すべき?

1980年台など売主がインスペクターに依頼をして診断書を出してもらった時期がありました。

売主が依頼をすれば、複数の購入希望者に診断書の開示ができるので1回の調査で完了して便利という利点があります。

しかし、売主側がお金を払ってインスペクターに依頼をすると欠陥があった場合にもその事実を隠してもらい診断書を作成するなど癒着が問題になりました。

そのためインスペクターには不備がないか細かく見てもらうよう、買主側がお金を払って依頼することで、公平性な取引が保たれるようになりました。

そのため売主としては

「専門家を雇って調査してよいと家を開放し、そのレポートを見て納得して購入しているのに、買ったあとから文句を付けるのはおかしい。」

となります。

買主が調査したうえで自己責任で購入しているといた文化なため、インスペクションを入れしっかりと見てもらった方が良いのです。

契約後でも、修繕依頼・価格交渉ができる

それでも、インスペクション費用が無駄になるのではないかと思われる方もいるのではないかと思います。

しかし、インスペクション費用以上の金銭的リターンがあることも少なくありません。

アメリカの売買では売主、買主が取引価格や引渡し時期を同意して、売買契約を結んでから初めてインスペクションを入れることができます。

もしここで、キッチンが壊れていたり何かしら不備が見つかるのであれば、修繕依頼を行い引渡しまでに直してもらったり、直さない代わりに売買価格から差し引いてもらうなどの交渉を行うことができます。

インスペクション費用が不備がなかったという安心材料という意味合いが強い日本とは異なり、契約後から更に交渉材料となるという違いがあります。

インスペクション費用は完全に掛け捨てになってしまうものでもないのです。

まとめ

アメリカ不動産は古いものも多く、基本は現況を見て買主の判断で購入することになるため専門家の調査が必要です。

調査で不備が見つかれば、契約後であっても修繕を依頼したり、修繕費分を残りの決済代金から差し引いてもらうなどの交渉もできます。

戸建てであれば$700くらいから費用がかかりますが、何千万円の購入するための安心材料や価格交渉材料になることを考えるとそこまで高くはないと思います。

アメリカ不動産購入の流れ