相続

アメリカ不動産を所有している場合の日本の相続税

大西です。

アメリカの不動産を所有している方の相続についてご説明します。

相続税の申告とプロベート

アメリカの不動産を所有している場合、確定申告同様、相続税もアメリカと日本で申告が必要になります。

アメリカの相続税は遺産税(Estate Tax)と呼ばれ、非相続人の遺した遺産に対して課税されます。日本の場合は財産を受け取る側に対して課税されますが、アメリカでは遺産そのものに対して課税がなされます。

そのため、相続税の納税義務者は亡くなった人になるのですが、実際は被相続人の財産は一旦、遺産財団に帰属します。そこで遺産管理人の代表者が裁判所の検認(プロベート)を受けて遺産税の申告・納税を行います。

全ての遺産の整理や、滞納している税金や管理になども調べ、相続財産を誰が受け取るかについても全て裁判所の検認(プロベート)を受ける必要があるため手間がかかります。

相続が発生してからプロベートが完了し相続人が財産を受け取るまでに1年ほど期間を有します。その期間当然不動産を現金化することが出来ませんので、日本の相続税の納税資金とすることはできません。そのため高齢の方が極端にアメリカ不動産に寄ったポートフォリオを組むことはおすすめしません。

アメリカでの相続税額と控除

遺産税は18%〜40%、累進課税となります。

非相続人がアメリカ人であれば、資産額から引ける545ドルの生涯控除額がありますが、故人が日本人であれば6万ドルしか認められていません。

また、アメリカ市民またはアメリカ居住者の配偶者が取得した財産には制限なく配偶者控除が受けられます。つまりアメリカの夫婦の相続では遺産税を支払うことはありませんが、日本在住の日本人の場合は適用されません。

そのためアメリカ不動産を所有する方が高齢になってきた場合には、財産整理や生前信託などの手続きをとられることをおすすめします。

日本の相続税

日本の相続税は、亡くなった方がアメリカにも不動産を所有している場合、非相続人(受け取る側)が日本国籍の日本在住者であれば、アメリカ不動産も含めて日本で相続税が課されます。

一方、アメリカでは非相続人(亡くなった人)の財産に対して遺産税がかかるため現地でも納税が発生する場合があり二重課税になってしまいます。

その救済措置として日米租税条約による外国税控除があり、アメリカで発生した税額を日本の相続税額から控除することができます。

アメリカの不動産の相続税評価額をどのように算出するか?

国税庁では次のように定めています。

・原則日本と同じ評価方法をする

・日本同様の評価が難しい場合は、市場での売買価格やその分野に詳しい専門家から評価を出してもらう

日本では土地は相続税路線価から、建物は固定資産税評価額から算出しています。しかし、アメリカでは路線価がありません。そのため、現地で信用性のある物件査定書類を出してもらいそれを評価額とします。書類についてはアメリカ不動産の評価資料3つを参照下さい。

そのため、海外の不動産評価≒時価となります。

相続税対策になるのか?

日本の不動産を購入すると相続税を圧縮できる理由は、時価と相続税評価額の差によっておきます。

先程述べたとおり相続税の評価は下記を用います。

土地→路線価

建物→固定資産税評価額

路線価と固定資産税評価額は時価と乖離があり、その差は都心になればなるほど大きくなるため不動産を購入すると相続税を抑えることができます。

また土地や建物を人に貸し出していると(賃貸アパート等)人を追い出してすぐに更地にして売却出来ない分、評価が下る計算方法になっています。

そのため地主さんにアパートを立てさせる営業が盛んになり、需要のないエリアに建築費の割高いアパートを建ててしまった方が沢山います。

相続税対策のためだけの不動産購入は非常に危険で、賃貸業単体としてやっていけるということを前提とした方がよいでしょう。

本題に戻ると、海外の不動産評価≒時価(鑑定評価)となり時価と相続税評価額にそれほど差がでないため相続税対策にはなりません

海外資産を所有している場合の相続は煩雑になるため、事前に税理士と打ち合わせを行なっておくことをおすすめします。

プロベートを避ける方法は2パターンありますのでご参照下さい。

アメリカ不動産の相続 プロベートを避けるには?

アメリカ不動産の所有権4つ