大西です。
アメリカの不動産を購入し、大きな割合を占める建物部分を4年で償却することで不動産所得で赤字を出し、給料所得と損益通算を受けることで還付金を受け取るという節税方法が流行っています。
高所得のサラリーマンの方が初めての不動産投資でアメリカ不動産を購入する場合はあまり大きな問題ありませんが、国内の不動産投資家の方がこのスキームを使う時は、国内の不動産の土地取得利子が損金にならない可能性があるので要注意です。
通常不動産で赤字を出せば損益通算できる
不動産所得が赤字だった場合、その赤字分は他の所得から差し引くことができます。例えば、不動産所得がマイナス100万円だった場合、給与所得が500万円であれば、損益通算して所得400万円に対して所得税・住民税がかかり、100万円分に対して税金がかからないことになります。
損益通算の注意点
しかし、不動産所得で赤字がでる場合には必ずしも他の所得と損益通算できるとは限らず、以下のような規定があります。
損益通算できない赤字の一つ
◯土地等を取得するための負債の利子に相当する部分の金額で一定のもの
黒字の場合は問題ない
不動産所得が黒字の場合は問題ないなく、土地建物に関わらず利息を全て損金とすることができます。
しかし、不動産所得がマイナスになると、土地部分の利息を経費とすることが認められていません。※経費としますが、他の給与との損益通算ができません。
黒字の場合
家賃収入 5,000,000万円
経費 2,000,000万円
利息 1,000,000万円
所得 2,000,000万円
このように黒字の場合は利息を全て経費とすることができます。
赤字の場合
家賃収入 5,000,000万円
経費 4,000,000万円
利息 3,000,000万円
所得 ▲2,000,000万円
利息3,000,000円の内、土地部分を80%とする
土地利息 1,600,000万円
建物利息 400,000万円
赤字の時は土地利息分を損益通算できないため
所得 ▲2,000,000万円
土地利息 1,600,000万円
合計 ▲400,000万円
不動産所得が赤字になったことで、黒字であれば経費となる160万円が経費とならず単純にお金がでていったことになります。
これは非常に勿体無い。
土地利息の計算
投資用不動産をローンで購入した場合の利息は土地に対するものと建物に対するものに分けられます。計算の仕方はローンはまず建物部分に使用され、残った分が土地に対する借入金です。
自己資金を沢山入れるほど、土地は自己資金で、建物はローンで買うようなイメージになりますね。
そのローンの按分で利息を割れば土地利息を求めることができます。
フルローンの場合は単純に土地と建物の割合で按分して求めます。
日本で都心築古物件に投資している方は要注意
日本の都心で築古の木造アパートを購入している場合は特に要注意です。
アパートを土地値で購入されている方も多いのではないでしょうか?
都心なので土地値が高く、建物は古いのであまり価値がありません。そうすると土地割合が90%以上なんてことも珍しくありません。
そうすると借入利息のほとんどは土地利息ということになります。
また融資がつきにくい戸建てと違い、アパートですとフルローンに近い融資を受けている方が多いと思います。そして築古ですと比較的金利が高い融資条件が多いと思います。
つまり都心築古アパート投資をされている方は土地利息が高い傾向にあります。
そのような方が不動産所得を赤字にして、利息が経費にならないというのは勿体無いことです。
利息が経費にならない訳なので無借金経営されている方は関係ありません。また地方の土地値が安いところでRCなど建物価格が高いものに投資している方は建物割合が高くなり土地利息の割合が都心木造アパートほど高くありません。しかしRCですと物件価格と共に融資金額が大きくなるため利息もそれなりの金額になってきます。
アメリカ不動産の購入には要注意
アメリカ不動産の節税方法は個人の給与所得と減価償却を損益通算する方法なので、購入者は個人になることが多いと思います。
アメリカ不動産を購入し、所得を赤字とすることで給与所得から差し引けるメリットがある一方、せっかく経費にできる利息の大半が経費にならない可能性があります。
対策方法
不動産所得が赤字にならない範囲でアメリカ不動産を購入する。
国内不動産は法人で買い進め、節税対策に個人でアメリカ不動産を購入する。
まとめ
せっかく節税をするためにアメリカ不動産を購入したにも関わらず、その一方で国内不動産の利息の大半が経費にならないのでは何を目的に物件を購入するのか分かりません。
不動産屋さんではそのあたりの計算をしてくれませんので、ご自身で計算する、または税理士に相談するなどして金額を算出して見て下さい。
土地利息が小さければそれほど大きな問題ではありません。
その上で適切な投資判断を行って頂けますと幸いです。