アメリカの不動産取引は大変活発であり、良い物件はすぐに買い手がついてしまいます。購入の際は取得に向けて素早く動かなければいけませんので、その手順についてご説明します。
オファー
まずは購入意思を示すため、売り主側にオファーを出します。このオファーを出すことにより交渉が始まります。他からのオファーが入れば競争になり価格交渉が不利になるので、良いと思う物件には素早くオファーを出し、早期に契約条件の合意をしなければなりません。
オファーを出し、合意すべき条件は主に以下の5つです。
①価格
②デューデリジェンス(検査)期間
③エスクロー会社
④エスクロー期間
⑤タイトル会社
①いくらで、②いつまでに物件の検査を行い、問題がなければ、③どこの取引機関を使い、④いつまでに決済を行い、⑤どこに所有権移転を依頼するか、を決めます。
必要書類
アメリカ不動産を購入したい人はいくらでも現れます。そのため売主は確実に購入できる方と商談を進めたいので、オファーを入れた方が本当に購入できる資金があるのか証明書を求めて来ることが少なくありません。
アメリカ不動産を購入したい方は英文の残高証明を事前に銀行から発行してもらうようお願いします。
カウンターオファー
上記オファーの条件を受けて、買主が返答を行います。価格は希望価格でよいが、エスクロー期間(決済までの期間)は短くしてほしいなど、合意できるところと交渉したいところを提示します。このオファーレター・カウンターオファーのやり取りは何往復か行う場合があります。
合意
お互いの希望条件に折り合いが付けば合意を行います。買主の希望する条件を全て売主に受け入れてもらえるわけではないので、強く希望するところは伝え、売主の希望するところを妥協しなければ合意に至りません。
エスクローオープン
条件が合意に至りましたら、エスクロー(売買における第三者機関)がオープンし取引が開始されます。
契約
両者の条件が固まり次第、その内容を元にエスクローにより売買契約書が作成されます。そして、これまでのオファーレター等に、売主、買主、それぞれのエージェントが署名し売買契約が締結となります。
手付金送金
エスクローオープンから3営業日以内に、エスクローが指定します金融機関に通常、売買価格の3%の手付金を送金します。後述しますが、手付金はデューデリジェンス(検査)の結果、重大な問題がありますと契約を解約することができ、手付金は全額返金されます。
デューデリジェンス(検査)
エスクローがオープンしますとすぐにインスペクター(検査人)に依頼し、素人では分からない物件の瑕疵(見えない傷など)がないか等、検査を行います。検査には3日ほどかかり、それを理由に解約を行う場合は契約前に定めた、『②デューデリジェンス期間』でなくてはなりません。そのため買主はできるだけ期間を長く取りたく、売主は短いことを好みます。
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タイトル・レポート
契約前に選びました『⑤タイトル会社』が物件の所有権や抵当権、地役権、先取特権など買主が不利となる権利が付いていないか、固定資産税などの未払い税金は無いかなど調査をおこない報告します。またタイトル・レポートにはタイトル保険が付随しており、もしそのレポートに書かれていない所有権や抵当権など、買い手に不利となる事項が将来的に判明すれば、その損害額を保証するというものです。
アメリカには日本の権利証に該当するものがなく、当局で登録・記録されているかどうかで確認しますので、タイトル・レポートに記載されている所有者や番号を元に確認を行います。
修繕箇所の合意
デューデリジェンスの結果、特に大きな問題がなければ契約は進みますが、設備などの故障が見つかれば買主は修理を要望し、買主は当然現状での引き渡しを希望します。修繕を行うか行わないかまで含め、デューデリジェンス期間内に合意をしなければなりません。
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署名
これらの条件を整えるまでに多くの書類をご確認、ご署名頂くこととなります。必要書類の種類については、州ごとに法律が違うため書類も異なります。テキサス州は書類が少ないが、カリフォルニア州は何十枚もあるというように、州によっては大量の書類に署名を行う必要があります。これらの書類は前もって用意されているものだけでなく、途中で何かしらの条件変更(決済日の変更等)があった場合には随時変更に対する合意書が必要となります。時差がある中での取引となるため、タイムラグが生じ早急に署名を求められることがあります。この早急な署名に対応するため、以下2つの方法があります。
電子署名
国内不動産の取引と違い、アメリカ不動産の取引はデータにて契約を進めていきます。契約書のやり取りについて『原本』という考え方がありませんので、データで送られてきた契約書に電子署名を行うことが可能です。電子署名ですと、内容を確認して承認ボタンを押すだけの作業となりますので、書類の枚数がかさむ際は実際に署名するより楽になります。
代理署名
事前に、署名に関する代理人をたてる旨を記載した委任状をエスクローに提出することで、代理人による署名が可能となります。業者に委任し、後程代理署名を行った書類の説明を受けるという流れがスムーズです。しかし1点、代理委任状を提出するにあたり、米国大使館にて認証署名を行わなければなりませんので、事前の準備が必要となります。
残代金送金
条件が整いましたら、買主はエスクロー期間内に残代金及び諸費用を送金します。残代金及び諸費用は決済日前日までにエスクローに着金していれば問題ありませんが、時差や使用する銀行によって送金に時間を要する場合があるので日にちに余裕をもたれることをおすすめします。
また日本の銀行で融資を受ける場合、日本円で融資が決定します。銀行の融資決定時や金消契約時は融資実行額が残代金に足りていても、送金実行時には、その日のレートにより残代金に満たない可能性もありますのでお気をつけ下さい。
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決済
決済完了後、諸経費の内訳などが記載された明細書が発行されます。所有権の移転を確認し明細書に署名を行うことで、売主に売買代金が支払われ余剰金の返金手続きが進みます。
譲渡証書
物件所在地の群当局で所有権の移転登記をする際に、当局の受領印を押してもらった書類です。あくまで申請を受け付けましたという受領印をもらった書類です。日本での権利証に該当するものはアメリカにはなく、物件の所有権はタイトル・レポートに記載の内容を保証するタイトル保険で保護されますので売却の時には必要ありません。
以上が、オファーを出してから所有権が移転されるまでの流れとなります。
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